別居恋愛 ～もう一度恋からはじめよう～

「聖は拓海の言うことならよく聞くね。私の言うことはなかなか聞いてくれないから」
「それは俺の言うことは聞かざるを得ないってほうが近いんじゃないかな。たぶん、瞳には甘えてるんだよ。何しても許される安心感があるんだろ」
「そうなのかな」
「うん。それに聖は瞳のためなら動くだろ？　今だって瞳に怪我させるのは嫌だから言うこと聞いたんだろ」

　そういうふうに捉えたことはなかった。なんだかとても新鮮な気持ちだ。違う視点が入ると見え方は変わるものらしい。

「そっか……そうなら嬉しいな。でも、普段から言うこと聞いてくれると助かるんだけどね」
「まあな。どうにもならないときはまた俺が言ってやるよ」
「うん……ありがとう」

　母も父も離れたところにいる今、拓海の言葉がとても心強かった。