別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~

4. 糸が切れて

「よし、片づけようかな」

 瞳はそう言うと気合を入れるように腕まくりをした。

「じゃあ、俺、洗い物するよ」
「え?」
「いろいろもの動かしてたし、それ戻したりするんだろ? さすがに俺じゃ配置までわかんないから、俺は洗い物してるよ」
「いいの?」
「いいに決まってるだろ? 何遠慮してんだよ」
「拓海……ありがとう」

 拓海の気遣いが嬉しくて思わず涙が出そうになった。確かに二人で暮らしているときは拓海が洗い物を担当することが多かったが、使い勝手のわからない家でまでやってくれるなんて思わなかったのだ。それに拓海は今日一日ずっと優しい言葉をかけてくれていたから、瞳はもう胸がいっぱいになっていた。このままだと本当に涙をこぼしてしまいそうで、瞳は慌てて目に溜まった涙を拭った。

「瞳? どうした?」
「あ、ごめん。何でもないよ。洗い物、よろしくね」
「ああ……」

 拓海は瞳のことを気にしているようだったが、瞳は大丈夫だと笑ってみせた。
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