別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「ふっ、うっ、拓海」
「お前は本当によくやってるよ。えらいな。でも、あんまり根詰めすぎるな。な?」
「……うん」
「俺もできることあれば協力するから、俺にも頼れ。平日は難しいけど、休日なら時間作れるから」
「うん……ありがとう、拓海」

 ずっと忘れていたが、拓海は瞳が困っているときにいつも優しく寄り添ってくれる人だったなと思いだした。ここ数年は心の距離が空いているように感じていたが、今でも拓海はこうして寄り添ってくれるとわかってとても嬉しい。久しぶりに味わう誰かに甘えるという感覚は、大層瞳の心を癒した。

「やっぱり痩せたな。頼むから自分の体は大事にしろよ? 心配だから」
「うん」

 瞳を気遣うその言葉が嬉しくて、また涙が溢れてくる。瞳はしばらくの間、拓海の肩に顔をうずめて静かに泣いていた。少しして涙が止まっても、瞳はなんだか離れがたくて、そのまま拓海に甘えるように体を預けていた。

 でも、少しすれば風呂場のほうから聖が風呂から上がってきたと思われる音が聞こえてきて、瞳はゆっくりと拓海から体を離した。

「あー、やっぱり上がってくるの早いな。泣き顔見られたくないだろ? 俺が気引いとくから、瞳も風呂入ってこいよ。ちゃんと待ってるから」
「うん……ありがとう」

 その優しい拓海の言葉に甘えて、瞳は聖と入れ違いで風呂場へと向かった。そうして一人になると、拓海に優しく抱きしめられていたことを急に意識してしまって、瞳は一人で顔を赤くしていた。
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