別居恋愛　～もう一度恋からはじめよう～
『もしもし？　瞳？』

　仕事から帰るとタイミングよく瞳から電話がかかってきて、拓海は他のことはすべておいて急いで瞳の電話に応答していた。

『拓海。今大丈夫？』
『うん、大丈夫だよ』
『あのね、ちょっと頼み事があるんだけどいいかな？』

　あの楽しかった焼肉パーティーから約二週間、ずっと何かしてあげたいと思っていたから、拓海は瞳に頼ってもらえたことがとても嬉しかった。何でもしてやろうと思った。

『いいよ。何？』
『あのね、拓海って理系科目得意だよね？』
『え？　うん、まあ、そうかな』

　その質問の意図はさっぱりわからなかったが、拓海は話の腰を折らないよう、素直にその質問へ回答した。

『だよね。あのさ、時間あるときに聖の勉強見てもらえないかな？』
『それが頼み事？』
『うん。聖、理系科目が苦手なんだけど、私も文系だから教える自信なくて……』
『はは。そっか。瞳らしいな』

　てっきり瞳が困っている何かを手助けしてくれという頼み事だと思っていたのに、瞳の頼み事は聖のためのものだった。そんな誰かのための頼み事というのが、本当に瞳らしいと思った。

『私、そんな文系っぽい？』
『いや、そういう意味じゃないよ』
『え？』
『いいよ、俺で大丈夫なら協力する』

　思った形とは違うが、瞳の頼み事なら断れないし、聖のためにもなるなら喜んで引き受けたいと拓海は思った。
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