別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
『本当に俺は大丈夫だから。それとも俺が行くとかえって瞳の負担になる? だったらやめとくけど……』
『え? いや、負担なんてそんなことないよ……むしろ嬉しい、かな』

 そんなことを言われたらもう毎週行くしかない。

『じゃあ、毎週そっち行く。瞳に会いたいから』
『えっ……ありがとう。嬉しい。あの、じゃあ、お願いします。でも、無理はしないでね?』
『うん。あのさ、一つお願いがあるんだけど』

 瞳からは随分といい反応が返ってきたから、拓海はもう少しだけ攻め込むことした。

『何?』
『土曜はそっち泊っていい?』
『え、泊まるの?』
『うん。泊まって日曜に帰る形がいいと思ってるんだけど、ダメか?』
『ううん。いいよ。泊まれるように準備しとくね』
『うん、よろしく』

 拓海は電話を終えると、思いきりガッツポーズをしていた。これから毎週瞳に会えるのかと思うと拓海の胸は自然と高鳴っていた。もう十年以上も一緒にいるのに、何を今さらと思うが、勝手にそうなってしまうのだから仕方ない。瞳に会える喜びに浮かれて、その日は眠るまで拓海の頬はずっと緩んだままだった。
< 64 / 156 >

この作品をシェア

pagetop