別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 拓海は持ってきた荷物を適当なところに置かせてもらうと、筆記具だけ取りだして聖の近くに座り込んだ。

「じゃあ、勉強頑張ろうか。でも、その前に。聖、いったん教科書とか問題集とか一通り持ってきてくれるか? 先に見ておきたいから」
「わかった。持ってくる!」

 聖は教材を持ってくるとドサッとテーブルの上に置いた。随分と量が多いなと思ったが、持ってきた中には塾の教材もあるらしい。聖は部活を引退してから塾に通いはじめ、そこで自分が理系科目、特に数学の理解が追い付いていないということに気づいたのだと教えてくれた。今は少しずつ家での勉強にも力を入れだしたところらしいが、暗記系以外は一人だと理解が進まないこともあって、拓海に声がかかったらしい。

 折角頼ってくれたことだし、しっかりと教えてあげたいものだが、拓海が高校受験をしたのはもう随分と前のことでよくは覚えていない。まずは自分が理解しなければならないだろうと、拓海は聖に普段通りに勉強するように言い、自分の記憶を掘り起こす作業にかかった。

 そうして拓海と聖が静かに勉強をする中、瞳は午前中にいろいろと家事をこなし、午後はしばらくの間リビングテーブルで仕事をしているようだった。


 夕方になり、瞳が仕事を終えてまた家のことをやりはじめると、聖の集中力もかなり切れてしまっていたから、その日の勉強はそこで終いにして、拓海は瞳を手伝うことにした。それで少しでも瞳の負担が減ればいいと思ったのだ。
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