別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
第五章 恋してる Side瞳

1. その感情の名は

 拓海が毎週来てくれるようになって、拓海と一緒に眠るようになって、二人の関係性はとても優しくて温かいものになった。拓海が瞳のためにと思っていろいろしてくれているのが痛いほどにわかる。拓海の言葉からも行動からもそれが伝わってくる。自惚れなんかじゃなくて、本当に瞳のことを大事に想ってくれているのが瞳にはわかった。

 自分の大切な人に大切にしてもらえるというのは、本当に奇跡のように尊いことだ。一度心が離れていた二人だからこそ、それがよくわかる。今のこの関係を壊したくない、大事にしたいと互いに思っているということが、瞳にはわかるし、きっと拓海もわかっている。

 眠る前のほんの少しの会話の時間がそれを教えてくれるのだ。今までは気恥ずかしくて言えなかったことを二人共が口にしている。すれ違うことがないようにと互いに自分の想いを表に出している。そうやって二人の関係をこの先も続けていこうとしているのが瞳はとても嬉しかった。

 別居を始める前からは考えられないくらい、二人の互いに対する態度は変わっている。拓海は心配になるくらい、瞳のことを気遣ってくれるようになった。聖にも本当によくしてくれる。拓海がそうやって何かしてくれるたびに、瞳はくすぐったい嬉しさで心が満ちていくのだ。

 でも、瞳はそれをもらいっぱなしでいるのは嫌で、ちゃんと瞳も拓海のことを思いやって何かしたかった。土曜の夕飯くらいではまったく足りている気がしない。だから、瞳はもう少しだけ拓海のために動いてみることにした。
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