別居恋愛　～もう一度恋からはじめよう～
「心配してくれてありがとうな？　でも、それこそ大丈夫だから。一人であの家にいると淋しいんだよ。こっちで瞳と聖と三人でいるのが俺の息抜きになってる。だから、そんな心配しなくていいよ」
「それなら、よかった」
「瞳に会いたくて、いつも週末が待ち遠しいんだよ」

　最近の拓海は時折こうやって甘い言葉を言ってくれるから、瞳はそのたびに胸を高鳴らせてしまう。ドキドキして、照れくさいけど、とても嬉しい。少し苦しいけど、それすら心地いい。その感情はずっと前に拓海が教えてくれたものだ。瞳は間違いなく今の拓海に恋をしているのだ。

「うん……私も拓海に会えるの毎週心待ちにしてる。拓海の顔見ながら話せるのすごく嬉しい」
「瞳」
「うっ！？」

　突然頬をぎゅっと押しつぶされて、瞳は思わず変な声を漏らしてしまった。

「そんなかわいいことばっか言ってるとチューすんぞ？」

　その台詞に瞳の心拍数は急激に上昇してしまった。

「えっ……」
「冗談だよ。聖がいるのにしないから」

　冗談だと言われても心拍数はなかなか元には戻らない。顔も熱くて仕方ない。今さら照れるのも変な話だが、恋をやり直しているような状態の今は、たったこれだけのことでも簡単に動揺してしまうのだ。

　拓海はまた普通に会話を始めたが、瞳はすぐには落ち着きを取り戻せなかった。たぶん、それは拓海にも伝わっていたと思うが、拓海はそれには触れずにただ優しい言葉をかけてくれていた。だから、次第に瞳も落ち着いてはいったが、冗談で終わってしまったのが少し残念だなという思いが残ってしまったのだった。
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