別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「……まあそれはいいけど。そうじゃなくてさ、折角だからデートしようかっつってんだけど?」
「へ!? デート?」
「ああ。どっか行きたいとこ連れてってやるよ。んで、帰りに買い物すればいいだろ? まあ、仕事があるなら無理にとは言わないけど」
「仕事は大丈夫……デート行きたい」

 瞳の仕事は特に時間が決まってるわけでもないし、調整はいくらでも可能だ。それよりも久しぶりのデートの誘いに乗るほうが今は断然重要だ。

「うん、じゃあ、行こうか。昼ごはん外で食べて、そのままどこか行って、帰りにホームセンターに寄るのでいいか?」
「うん。あ、最後にスーパーにも寄ってほしい。夕飯の買い物もしたいから」
「わかった。買い物あるし、あんまり遠くには行けないよな。瞳、どこか行きたいとこある?」

 拓海の言う通り、夕飯の支度などから逆算するとそう遅くまでは出かけていられない。ホームセンターにも寄るわけだから、一時間くらいで楽しめる場所がいいだろう。瞳の地元だし、ここは自分がいいスポットを思いつかなければと瞳は必死に頭をひねらせた。

「えー、どうしよう……この辺何かあったかな……うーん……あ、あそこ! 植物園! ここからそう遠くないところに植物園あるからそこ行ってもいい?」

 車で行けば十五分もかからない場所にある。随分と長いこと行っていなかったからすぐには出てこなかったが、この辺のデートスポットとしてはいいところだろう。

「いいよ。じゃあ、朝のうちにやりたいことさっさと済ませてから行こう。俺も掃除とかやるから」
「それは優しすぎるよ、拓海」
「瞳と少しでも長くデートしたいっていう下心ありだから優しくはないかもな」
「もう、からかってるの?」
「本心だよ」

 これ以上何か言っても自分が恥ずかしくなるだけだとわかったから、瞳は大人しく拓海にも家事を振り、二人は十一時半頃に家を出た。
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