別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 植物園に行く途中に適当なレストランに入って昼食を先に済ませたから、二人が植物園に着いたのは十二時半頃だった。子供の頃に来て以来だから、瞳ははっきりとは覚えていない。外観を見てもあまりピンとは来なくて、瞳はこんなところだったかなと思いながら、植物園へと足を踏み入れた。


「瞳。ほら、手」

 拓海が片手を差し出してくる。手を繋ごうと言ってくれているのだろう。そっと拓海の手に自分の手を重ねてみれば、拓海にしっかりと手を握り込まれて、それだけで胸が高鳴ってしまった。少し恥ずかしくて、ちらとだけ拓海に目を向けてみれば、驚くくらい優しい表情で瞳のほうを見ていたから、瞳は益々照れくさくなって、拓海の後ろに少し隠れるようにしながら歩いていった。

 冬の季節だから、きっと温室の花が一番きれいだろうと予想し、二人は温室を目標にしながら、その道中にある植物も観察しながら歩いていった。
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