別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 二人は一つ一つの植物をじっくりと観察しながら、温室の中を歩いていった。植えられている植物は南国風の派手な見た目のものもあれば、可憐でかわいい花も咲いている。それらを見てあーだこーだと話しながら進んでいたら、サボテンが植えられているコーナーへとやってきた。

「ねぇ、拓海。見て見て。このサボテン大きい」

 目前には天井まで届かんばかりのサボテンが生えている。

「本当だ。荒野に生えてそうだな。瞳、触ったらダメだぞ?」
「ちょっと子供じゃないんだから、そんなことするわけないでしょ」
「興味津々だったから」
「だって面白いから。大人になっても見上げるほどの植物って迫力すごいよね」
「そうだな。はは、瞳本当に楽しそうだな」
「うん、楽しい」

 この場所が楽しいというのはもちろん、拓海と二人で出かけているという今の状況がとても楽しい。

「そうか。それならよかった。デートに誘った甲斐がある」
「うん、誘ってくれたの嬉しかった。ありがとうね、拓海」
「いいよ。また誘うな」

 いくつになってもデートに誘われるというのは嬉しいものらしい。今から楽しみで仕方ない。その気持ちを伝えるように微笑みながら瞳が頷くと拓海も嬉しそうな笑みを返してくれた。次のデートはもう少し先のことになるだろうが、きっと拓海は約束通りに誘ってくれるに違いないと瞳は思った。
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