別居恋愛 ～もう一度恋からはじめよう～

「何？　だから私のこと誘ってくるわけ？　旦那といると息詰まるとか？」
「いや、そこまでじゃないけど……」
「でも、不満あるんでしょ？」
「まあね。長く一緒に過ごしてればいろいろあるよ」
「全部ため込んでるの？」
「うーん、言うときもあるし、言わないときもある。でも、別にものすごくストレスになってるとかじゃないよ？　まあ、家族ってこんなもんかなーって思うし」
「家族ねー。家族っていってもあんたらは夫婦なんだから、言わないとわかんないこともあるんじゃないの？」
「うん。まあ、必要なことは言ってるから大丈夫だよ」
「本当に？　最近の瞳なんか淋しそうに見えるけど」

　芳恵は本当に人の機微に聡い。すぐになんでも見抜いてしまう。彼女の前では隠し事なんてできないのだ。

「芳恵は私のことよく見てんね。まあ、淋しいのはしょうがないかな」
「なんでよ」
「今さらそんなこと言えるわけないじゃん。もう長いことそういう雰囲気にもならないし。なんかそういうこと言うのも気持ち悪いかなって……」
「いやいや、何言ってんの？　気持ち悪いわけないじゃん。てか、何？　長いことって、もしかしてずっとレスなわけ？」
「うん……まあ、子供も特別欲しいと思ってないから必要ないし」
「いや、子供とか関係なく必要でしょ。それが原因で離婚だってあるよ？　大事なことだって」
「それはそうだろうけど。でも、お互いがそうじゃないとダメだから。私ももうそうなれるかわかんないし」
「……本当に全然なれない？」
「わかんない。そういう雰囲気にならないから……」

　本当に瞳にはわからなかった。そういうことから随分遠のいてしまったから、もう昔の気持ちも思いだせない。