別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「初めてでもないのに何やってんだろうな」

 拓海も同じようなことを思っていたのだとわかって、思わず笑いがこぼれる。

「ふふ、うん」
「バカみたいに嬉しい」
「うん」
「瞳。もう一回だけしていい? 今日だけだから」
「え?」
「あとは瞳が帰ってくるまで我慢するから。あと一回」

 その言葉を言われて思い浮かんだのは、「聖がいるのにしない」と言った拓海の言葉だった。聖に気を遣ってくれているのだろう。いつも一緒の部屋で寝ていても拓海は必要以上には近づいてこない。今の台詞も聖がいるところでそういうことはしないと言っているのだと思った。

 そうやって聖のことも気にしてくれるのが本当に嬉しい。そして、何よりも瞳とのキスを「我慢する」という表現を使うくらいに望んでくれているのだということがとてもとても嬉しかった。

「……うん、いいよ」

 瞳が再び肯定すると、今度は少し長めの口づけがやってきた。ただ触れ合わせるだけのキスだったから、優しい想いが伝わり合うようなそんな気がした。

「なんか照れくさいな……ケーキ、食べようか」

 拓海のその言葉に頷いて二人で静かにケーキを食べはじめた。口に運んだケーキはとても美味しかったけれど、なぜだか妙に甘ったるく感じてしまったのだった。
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