別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「どうしたんだよ。お前もいつも楽しそうにしてるだろ?」
「そりゃ、基本楽しいけどさ。でも、俺今大変なんだよ。なあ、聞いてくれよ、拓海」

 余程大変な何かがあるらしい。優が引き起こすトラブルに関わるとろくなことにならないのだが、放っておくとさらに面倒なことになりかねない。拓海はとりあえず話を聞いてやろうと続きを促した。

「何?」
「俺、嫁に離婚届見せられて、脅されたんだよ……」

 まさかの離婚危機に拓海のほうがドキリとしてしまった。これは相当なことをやらかしたのだろう。じゃないと離婚届なんて簡単に出てくるわけない。

「今度は何やらかしたんだよ」
「同じだよ……いつものことしかやってねぇよ」
「それは……奥さんに怒られても反省せずに、同じことやらかし続けたってことじゃないのか?」
「そうとも言う?」

 優はそう言いながら肩をすくめて笑っている。全然反省しているように見えない。何か大きなことをやらかしたというわけではないようだが、あまりにも優が変わらなくて我慢の限界がきてしまったんだろうなと拓海は思った。

「はあ。笑い事じゃないだろ。離婚届出されるって余程のことだろう。お前、このまま変わらなかったら、本当に離婚されるぞ?」
「やめろよ。怖いこと言うなよ……」
「怖いと思うなら反省しろ。ちゃんと相手のこと思いやらないと簡単に関係は壊れるんだから……」

 拓海と瞳の関係も一歩間違えば壊れていたに違いない。結婚しているからと高を括ってはいけないのだ。拓海は決して瞳と離れたくはないのだから、これからも想い合える関係を築いていられるよう努力していきたいとそう思う。



 その後も優は情けないことを言い続けていたから、拓海はそんな優を叱咤し、友人が離婚危機を脱せるようアドバイスを送ったのだった。
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