月花は愛され咲き誇る
 それでも多少は内包する力があるのか、ぼんやりと舞台の紋様は光を放つ。
 とはいえ流石に長もそのような力の弱い娘達から選ばれるとは思っていないのだろう。初めのうちは他愛もない話題を提供しつつ燦人に酒や料理を進めていた。
 だが、一人、また一人と舞を終えると、徐々に落胆の色が濃くなっていく。燦人が全くもって反応しないからだ。

 一応紋様が光出した頃一瞥(いちべつ)するが、それだけ。まるで興味を持つ様子がない。
 それでも最後の娘の番となると、周囲はやはりこの娘なのだろうと多くの期待を寄せた。
 だが、その娘ですら対応が同じとなれば落胆どころか騒然となる。
 やはりこの里の者では選ばれぬのか。
 だが、それならば何故若君は初めにこの里を選んだのか。
 大きな騒ぎとまではならなかったが、そんな声がそこかしこで聞こえてきた。

「……まさか、先程の娘で最後なのか?」

 だが、愕然としているのは燦人も同様だったらしい。
 信じられないといった様子で呟いていた。

「え、ええ……その……」
「あら、指定された年齢の娘ならここにも一人おりますわ」

 汗がにじみ出ていそうな長の言葉を遮り、鈴華が得意げに言ってのける。
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