女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
3章 父と娘
桜花の自宅は、吉野総合病院に隣接している。

父、吉野慶司は吉野総合病院の院長だ。

代々続く、総合病院は分院も数件ある大病院だ。


吉野の書斎。

師匠端島8段宅の研修会から戻ったばかりの桜花と吉野が向かい合っている。

「桜花、受験は大丈夫なのか? 模試の成績はどうだった?」

「模試はA判定でしたわ」

吉野は成績や受験を理由にどうにかして、将棋を止めさせたいのだが。

止めさせる口実を突きつけようとしているにも係わらず、桜花には全く止めさせる理由がないことが、気に入らない。

「翡翠くんから聞いたんだが、将棋のタイトル戦に勝ち上がっているそうだな」

吉野は話題を変えてみる。

「ええ。次は準決勝ですわ」

「将棋はいつまで続けるつもりだ?」

「将棋は止めませんわ。勉強ともちゃんと両立していきますわ」

「いつも言っているが、何故そうも将棋にこだわる?」
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