女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
4章 予選
桜花は昨年11月から始まった大光建設杯清麗戦の予選に、第1回戦から第4回戦を順調に勝ち上がってきた。

6月某日、予選第5回戦。

吉野桜花女流4段 対 清水千代子女流7段。

吉野桜花はグレーのブレザー、丸襟ブラウスにリボンタイ、チェックスカートの制服姿で、対局に臨んでいる。

桜花は対局の時の服装は制服と決めている。

制服は自然と気持ちを引き締めてくれるし、着なれている制服だと変に緊張することもないからだ。

対する清水千代子は35歳。

黒ぶちメガネで肩くらいまでのボブ髪、地味で暗い感じの女性だ。

桜花先手、局面は終盤にして優勢なのは清水だ。

だが、桜花は持ち時間を12分残しているのに対し、清水は持ち時間を使い果たし1分以内指しになっている。

視聴室には桜花の師匠端島と弟子萩尾4段、翡翠の顔もある。

後手清水が3六飛車を指す。

間をおかず先手桜花が角で歩を取る。
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