女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
銀を取り、ケンカを受け勝ってこそ、1流ではないかと。

見里は5分、葛藤し9六香と指す。

桜花は4四歩、後手見里の王は窮地に立たされている。

後手清水が4御銀で飛車取りに出る。

先手桜花はすかさず1六飛車で飛車を逃がす。

後手清水は1分ギリギリまで考え3四銀、角前に指す。

先手桜花は持ち時間12分フルに考え、7三銀を確信を持ち、力強く指す。

パチーン、盤が小気味良く鳴った。

試聴室では、固唾を飲み観戦していた将棋ファンたちがその瞬間、盤面を注視し静まり返った。

後手清水は桜花が角を逃さず、7三銀と指した盤上を睨みつけ、次の1手を探す。

「10秒…20秒…」

無情に秒読みが進む。

「……ありがとうごさいました」

清水のひと言が終わらないうちに、試聴室では部屋が揺れるほどの歓声が上がった。

清水の頬を涙が伝う。
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