女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
にも係わらず、お決まりごとのように「本戦の相手は誰か」と聞いてくるのに、桜花はうんざりしている。

見里は連勝記録更新し続けていて、女流棋士最強と言われている。

桜花は記者が敢えて、本戦で待ち構えているのは誰かと聞いて、桜花に見里加奈子だと答えさせようとしているのを察した。

見里の名を口にして、見里を意識していると自覚したくはなかったせいもある。

何より、桜花は見里が最強だと思っている記者たちに、見里など眼中にないと思わせたかった。

「先ず予選決勝。本戦がどなたであろうと、私は私の将棋をさせていただきます」

カメラのフラッシュの光と音の中、桜花は毅然として答えた。

将棋会館の玄関。

翡翠と端島、萩尾が桜花を迎えた。

「劣勢からよく勝利したな。最後の1手はよく読みきった」

端島は誇らしげに、笑顔を見せた。

「端島師匠、ありがとうございます」

「桜花、頑張ったな」
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