女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
桜花はスマホで時間を確認すると、「あっ」と呟き目を丸くした。

「翡翠さん、時間より10分も早いですわ。ごめんなさい、行きますわ」

「カフェ、また今度ね」

桜花は純香と佳代子に、「ええ」と答えて手を振った。

純香と佳代子は教室を出て廊下を走る桜花を見守りながら、いつもながら慌ただしいなと思う。

「桜花って、いつ息抜きしてるんだろう」

「仕方ないわよ。中学生で女流棋士になって、ずっとトップクラスで闘っているんだもの」

純香と佳代子は窓から校門前を見下ろしている。

「あっ、降りてきた」

「イケメンだよね、桜花の彼」

「如月製薬の御曹司がほぼ毎日お迎え。いいな~」

「あの2人、婚約するって噂があるらしいよ」

「政略結婚?」

「10歳違うんだって」

「けっこうな年の差だよね」

「幼なじみだとか。詳しくは知らないんだけど」
< 2 / 66 >

この作品をシェア

pagetop