女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
翡翠は自分が1番に声をかけたかったのにと思いつつ、桜花の嬉しそうな顔に、声をかけた。

「翡翠さんが観ていてくださるのに負けるはずがありませんわ」

桜花は師匠に誉められるより、翡翠の言葉の方が嬉しかった。

「翡翠さん、あんた吉野さんの何?」

萩尾は桜花が翡翠と親しげに話すのが面白くないのか、先日のこともあり翡翠を見上げ、ね目つけた。

「桜花とは幼なじみで、いづれ婚約する予定だ」

翡翠は萩尾に小声で答えた。

まだ公にはできない話だなと、内心思って気が引けた。

「こんな所でその話は」

案の定、桜花に言われ「すまない。桜花、送っていこう」と、萩尾から引き離した。

黒塗りのベンツ車中。

「桜花、体調はどうだ?」

「やはり、翡翠さんにはわかってしまいますのね」

「桜花、君は自分が思っているほど丈夫ではない」

「対局のたびに感じますわ」
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