女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
対戦相手は加藤杏子女流5段25歳。

栗色の髪で、胸辺りまでの髪を後ろで束ね、バレッタでまとめて、ワンピースの上に冷房対策で薄手のカーディガンを羽織っている。

先手は加藤杏子、後手は桜花。

加藤の居飛車で始まった対局は終盤を迎えて、五分五分の情勢だ。

どちらも持ち時間は使い果たしている。

1分以内に打たなければ自動的に負ける。

緊迫感ど精神的ストレスで、桜花の気力も体力もギリギリの状態だった。

勝ちたい、勝って本戦で闘いたいと、桜花は頭をフル回転させる。

桜花が時間ギリギリで、4二角と指す。

加藤はそれに2一飛車と指し返す。

形勢は加藤の優勢。

桜花はギリギリまで粘り、2九飛車成と指す。

加藤の目の色が変わる。

わたしの勝ちだ、次の1手で詰みだと口角を上げ8八歩と確信し、バチンと盤を鳴らした。
< 22 / 66 >

この作品をシェア

pagetop