女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
「救急車を!」

立会人が叫ぶ。

「吉野さん」

加藤が桜花を心配そうに覗き込んだ。

桜花の師匠端島、弟子の萩尾、記者、観覧者も対局室に駆けつけた。

翡翠も桜花に駆け寄り、桜花の制服のタイを緩め、スマホを取り出した。

濃紺のスーツをビシッと着こなした翡翠は、桜花の顔色を観察しつつ、スマホを操作する。

「千代田区将棋会館にお願いします。患者は女子、17歳、過呼吸で失神、意識なし。通報者は如月翡翠、電話番号はーー」

翡翠は淀みなく救急車を手配した。

翡翠は救急車に乗り、桜花に付き添った。

「普段、通院されている病院は?」

「吉野総合病院の循環器科にかかっています」

翡翠は知っている限りの情報を伝えた。

診察の結果は深刻なものではなかったが、桜花は用心のため検査入院することになった。
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