女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
5章 守る覚悟
数日後、桜花宛に本戦の通知が届いた。

桜花は大光建設杯清麗戦の決勝で失神した後、救急車で自宅の吉野総合病院に運ばれた。

数時間後に目を覚ましたが、大事をとって静養を兼ねて入院し、念のため幾つか検査も受けた。

桜花の父、吉野慶司は桜花の病室に血相を変えて入ると、本戦の通知が入った封書をベッドに叩きつけた。

「将棋などに(うつつ)を抜かしている場合か! お前は受験生だ。そもそも対局後に失神するような状態で、何局も何時間もの対戦に耐えられるのか!」

吉野は個室の扉越しに廊下まで響くかと思うほどの声で攻め立てた。

「将棋は私の生き甲斐ですの。受験もお父さまがご希望される大学にきっと受かってみせますわ。本戦は例え這ってでも指し通し、タイトルを制しますわ。タイトル戦だけではありませんわ。私、将棋はずっと続けていきますわ」

桜花も負けじと反論する。
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