女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
「何故そこまで将棋にこだわる? 何故そこまでして将棋など」

桜花は「またお父さまのお小言が始まった」うんざりしながら答える。

「自分に自信を持ちたいからですわ。翡翠さんに釣り合う女性になりたいからですわ」

これだけ言って何故、伝わらないのか、いい加減にしてほしい、桜花の声は自然と大きくなった。

「翡翠くんだと!? 何故、彼が」

翡翠はたかが婚約者だ。

しかも10歳も年が離れている。

吉野には娘が何故、翡翠にそこまで拘るのか、腑に落ちない。

「お父さまには解りませんわ、出ていってください」

ーーいくら話しても、おとうさまに私の気持ちは伝わらない。将棋への思いも、翡翠さんへの気持ちも、おとうさまには理解してもらえない

桜花はそう思って捲し立てると、父吉野から顔を背けた。


桜花病室外。

桜花の見舞いに来た翡翠と吉野が出くわし、翡翠は驚いた様子で挨拶した。
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