女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
6章 進路と将棋
高校、教室。

「桜花。進路調査票は出した?」

桜花は目を丸くし「えっ?」と呟いた。

「純香、いつまででしたかしら?」

「やっぱりまだだった? 明日までだけど」

「佳代子、迷ってはいませんのよ。ただ、えっと……無くしたわけではありませんのよ。たしか……」

桜花は鞄の中を探り、進路調査票を挟んだファイルを取り出した。

「……白紙でしたわ」

桜花は進路調査票を見てバツが悪そうにしながら、フフッと笑い、筆記用具を取り出し書きこんでいく。

「桜花って、しっかりしているようで、抜けてる」

「将棋の対局でたいへんだったから、忘れてたのよね」

「そういうわけでは……」

将棋で忙しいからは理由にならないし、将棋のせいでと言われるのは癪に障った。

純香が進路調査票を覗きこむ。

「ああ、やっぱり医学部志望」

桜花は顔を上げ、手を止めた。

「ええ。病院の娘ですもの」
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