女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
桜花は答えながら、父親の希望通りの志望校ではなく、「プロ棋士」と書けたらと思った。

「将棋は?」

「将棋はもちろん続けていきますわ」

桜花は間髪入れずに、目を輝かせて答える。

「そんなに将棋が好き?」

「もちろん」

「佳代子、聞くだけ野暮よ。好きに決まってるわよ。女流棋士だもの。タイトル戦で戦うほどの腕前なのよ、桜花は」

「まだまだですわ。上にはたくさん居ますもの」

「でも、今度はタイトル保持者で、タイトル戦連覇のかかっている見里加奈が相手の5番戦なんでしょ? 凄いわよ」

「ああ~。夕方のニュースで女流棋士タイトル戦の対戦相手が決まったとか言っていたあれ? 清……」

「清麗戦5番勝負よ」

「去年は出場できませんでしたわ。でも今年は本戦にまで勝ち上がったんですもの。負けませんわ」

「いつも迎えにくる人は見学に来るの?」

「解りませんわ、忙しい人ですもの」
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