女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
桜花は翡翠には対局を見守っていてほしいと思っているるけれど、それは難しいことを知っている。

「予選の決勝は観に来てくれてたのよね」

「……翡翠さんか居合わさなかったら私、今頃どうなっていたか」

桜花は思い出しただけでも、不安でたまらなかった。

「ピンチの時には側に居てくれる、ステキね」

「そう、翡翠さんはそういう人ですの。でも私、守られているばかりはイヤですの。もっと強くなって、お応えしたいんですの」

「本戦、頑張らなきゃだね」

「ええ!」

桜花は満面の笑顔で力強く答えたとほぼ同時に
佳代子が窓から校門を眺める。

「あっ、桜花。お迎えの車が来ているわよ」

「もうそんな時間?」

桜花は窓から校門前を見下ろし、黒塗りのベンツが停まっているのを確認すると、急いで筆記用具と進路調査票を鞄にしまった。

「桜花。進路調査票、ちゃんと書き終えて明日必ず提出するのよ」

「ええ」

桜花は答えるとアワアワしながら、教室を出ていき、走っていく桜花の足音が廊下に響いた。
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