女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
桜花は内心では食らいついてでも勝ってみせると思いながら、しずしずと1礼した。

見里が桜花の内心を見透かしたように、桜花を冷めた目で見下ろし、姿勢を正した。

「開始時間になりましたので、対局を始めます」

立会人が対局始まりを宣言し、駒振りの結果、桜花先手、見里後手が決まった。

「よろしくお願いします」

対局は礼に始まり、礼に終わると言われる。

双方、姿勢を正し1礼した。

桜花は初手に6二銀を指す。

解説室では桜花の初手に対し、解説者が驚きを露にしていた。

「これは……なんと! 定石を無視した1手です」

「初手にこの1手とは吉野4段、思い切った1手を指しましたね」

解説1「野球に譬えるなら、バットを逆さに持って打席に立ったようなものですよ」


対局室。

見里が桜花の初手に眉を潜めた。

見里の表情は硬い。

桜花の初手に対し「3二金」と指す。
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