女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
「初手にどう云うつもり? いくら何でも最低限の定石があるわ。血迷ったのかしら?」

桜花、8八歩と指す。

「定石通りに指さなければという決まりはありませんわ」

桜花が言う間に見里は同王と指す。

「生意気な口を利くのね」

桜花が指した後、見里は5八銀不成を指そうとし、その後の展開を計算し始める。

先手が6三銀成、後手6七銀不成、先手同金、後手5九角成、先手4三歩成……

それから……後手同金成、先手5五飛……。

101手目に先手の勝ち? 

わたしが負ける、5八銀不成ではなく5八銀?


見里は銀の駒に指を置いたまま、動かない。

「見里清麗!? どうかなさいましたか、気になることでも?」

「別に何も」

見里はツンと澄ました顔で、5八銀不成と指す。

見里が先読みした通りに盤面は進んでいく。
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