女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
修正しなくては、でも吉野の1手を交わす手が見つからない、吉野の指す手を無視できない。

「よろしいんですの? このまま指しつづけても。回避の1手を探さなくてもいいんですの?」

桜花は既に自分の勝ちを見据えている。

対して見里は自分の負けが見えて、焦りを感じていた。

5八銀不成ではなく5八銀と指していたら101手目はどうなっていただろうと、しきりに考えた。

まだ、何かできることはあるはず……何か。

見里は考えては指し、考えては指しを繰り返した。

桜花の持ち時間は殆ど使われずに残っている。

見里の持ち時間はジワジワと削られていった。

見里は桜花が指すはずの101手目を何とか阻止する1手を考え、足掻いている。

一縷の望みをしきりに探りながら。

「さあ、見里清麗.。どう指して来ますの?」

桜花は見里の苦戦するさまを窺いながら、対局を楽しんでいた。
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