女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
「大丈夫ですわ。今度のタイトル戦は準備万端ですの。負ける気がしませんの」

桜花は気丈に答えて、翡翠に微笑みかけた。

「桜花は真面目だからな」

「ええ、将棋は好きですもの」

「桜花は飲み込みが早くて、どんどん強くなった」

「翡翠さんの教え方が良かったんですわ。私、翡翠さんに1から教わりましたもの」

「桜花が病室で退屈そうにしていたからな」

「そうでしたわね。将棋を教えていただく前は退屈で淋しくて押し潰されそうでしたわ」

「いつの間にか俺より強くなって、女流プロだものな」

「翡翠さんが教えてくださらなかったら、きっと
ここまで続けていませんでしたわ」

「桜花、君のためなら助力は惜しまない。何でも言ってくれ」

「翡翠さんにはじゅうぶんいただいていますわ」

「俺は何もしていない」

翡翠はポツリ呟いて、窓の外に目を向けた。
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