女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
解説室。

「見里清麗は苦戦していますね」

「吉野4段は生き生きしていますね。のびのびと指しています」

「このまま進めば吉野4段が……」

第1局は無情にも見里の読み通りに進んだ。

見里は回避の1手も逆転の1手も見出だせずに投了した。

タイトル戦、第1局目を桜花が勝利したことで、視聴室も対局室も騒然とした。

見里は感想戦で終始、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

インタビューでは桜花の指した初手に質問が集中した。

「他意はありませんわ。定石ばかりでは楽しくありませんもの。新しい1手、強い1手、AIが予測できない1手を追及するのは棋士としてのサガですわ。そう思いませんこと?」

見里は女子高校生が生意気なことを言うと思った。

この小生意気な女子高校生を何とかギャフンと言わせてやりたいと思った。

記者や観覧者は桜花の言い分に、納得したり、賛同したりし歓声を上げた。
< 40 / 66 >

この作品をシェア

pagetop