女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
このまま翡翠さんと話していたい、対局にいかなければ、なごり惜しさと迫る時間に桜花の気持ちが揺れた。

翡翠は桜花の気持ちを察しているのかいないのか、表情からは窺いしれない。

「……翡翠」

桜花が翡翠の名を口にしかけた時、翡翠は桜花の首にお守りを そっとかけた。

「今朝、八幡宮でいただいてきた。時間だな。桜花、応援している」

朝からわざわざ八幡宮まで車を走らせ、自分のためにお守りを用意してくれた翡翠の気遣いが嬉しかった。

首に微かに触れた翡翠の手の暖かさが、桜花の気持ちを和ませた。

「ありがとうございます。お守りを翡翠さんだと思って闘いますわ」

桜花は翡翠が見送る中。

数回、手を振ると意を決して、搭乗口へと向かって行った。
< 43 / 66 >

この作品をシェア

pagetop