女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
9章 八幡さまが味方
大光建設杯清麗戦 本戦第2局。
7月25日、福岡県福岡市HOTELニューオータニ博多。


桜花はいつも通り制服、見里は黒スーツ姿だ。

先手桜花の7四歩指しから始まった。

7手目。

先手桜花が4八玉を指し、平凡だった盤上はしだいに活気づいた。

五分五分の攻防が続く。

拮抗を繰り返し終盤。

81手目。

先手、桜花2五銀に対する後手、見里は4四銀と指し返す。

桜花は即1四銀と指す。

ーー見里清麗、この1手。

桜花は賭けに出た。

持ち時間は見里10分、桜花5分。

見里は桜花の指した1四銀を睨みつけた。

……ケンカを売られた

見里は桜花が指した瞬間、自身の体に電撃が走るのを感じた。

見里には1四銀を無視して、5五金と指せば形勢は後手見里が優勢になるのはわかっている。

が、見里の頭に1四銀が離れない。

売られたケンカに背を向けて勝ってもと意地が働いた。
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