女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
「1四銀はどういった意味で?」

「ケンカを売りましたわ。見里清麗は必ず受けてくださると思いました」

「えっ」という記者たちの吐息の後、桜花への質問が続いた。

「売られたケンカを買っても勝つのが1流棋士だと?」

「ええ。5五金を指されたら、苦しい展開になっていましたわ」

「5五金と指された時の策も考えておられましたよね?」

記者たちが当然だろうという前提の元に、桜花に問いかけた。

「秘密ですわ。今日は八幡さまが味方してくださいましたわ」

桜花は記者たちの質問の意味も意図も承知しながら、秘密のひと言で煙にまいた。

「これのお蔭ですわ」

桜花は言いながら、翡翠が空港ロビーで首かけてくれたお守りを見せた。

「お守りですか? どなたから」

「私に、最初に将棋を教えてくださった方に」

桜花はカメラに向かって、華やかに微笑んだ。
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