女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
如月邸、書斎。

翡翠と翡翠の父銀之丞が向かい合っている。

「吉野の娘は清麗戦2勝したそうだな」

「はい。今までの2局は順調でしたが、次は恐らく苦戦するかと」

「正念場だな。ところで翡翠、あの娘と本気で婚約を考えているのか」

「はい。彼女以外には考えておりません」

翡翠は内心、また反対の話かと溜め息をついた。

「……予選では対局後に1度、倒れたそうではないか。吉野氏は元気になったと言っていたが、とうやらそうではないようだ」

「それは……」

翡翠は提出したデータを銀之丞に渡した後、いづれは、この話を突いてくると察していた。

 「吉野の娘は確か、数年前に弁膜症と心房細動の治療にメイズ手術をしていたな。新薬のデータ、あれは彼女のものだな」

「ええ。吉野氏の病院で該当するサンプルは彼女が最適人だと判断されたようです」  
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