女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
「翡翠。吉野の娘は多少、元気になったようだが未だに服薬で体調をコントロールしているような身体だ。後継ぎを考えると、やはり婚約は」

「あの新薬はマウス投与も試験し、害はないというデータも採れているモノです。対象への臨床試験投与も厚生省の認可を得ています」

「翡翠。薬や身体のことだけではない。吉野の娘とは10才もの年の差がある。うまくいくと思っているのか」

「彼女は幼なじみです。ずっと彼女を見てきました。彼女は年齢こそ若いですが、しっかりした考えをもっています」


銀之丞の言うことは翡翠も重々、解っている。

桜花が幼い頃から入退院を繰り返していたことも、未だに薬を手放せないことも、10歳も年下だと云うことも、婚約反対のじゅうぶんな理由だと。

「女だてらに棋士をしているような変わり者に、如月の嫁が勤まるとでも?」  

女流棋士をしている桜花が家庭を守り、翡翠の補佐をするには厳しいだろうことも、翡翠は察している。

対局は全国各地で行われる。

桜花が家庭に収まる女性ではないことは明らかだ。

それを承知しても尚、翡翠には桜花以外に婚約は考えらない。
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