女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
先手見里清麗が8四飛と指し、桜花は厳しい状況に追いこまれていた。

ギリギリでどうにか7一銀と指したが、形勢を覆すことはできず、敗けを覚悟した。

先手見里清麗の5三とで決着が着いた。

「負けました」

桜花は清麗戦2対0と、追い詰められた見里の鬼気迫る強さに圧倒され、気迫敗けだったと項垂れた。

1礼の後の感想戦は見里が勝ち誇った勢いで上機嫌だった。

対戦室に雪崩こんだ記者たちは、見里よりも桜花にマイクを向けた。

「やはり、ストレートでは勝たせていだけませんでしたわ」

「負け惜しみかしら。次からも踏み潰してやるわ」

「気迫に押され、読みが甘かったですわ。7七馬、痛かったですわ」

桜花は悔しさを抑えつつ、笑顔を崩さず感想戦を終えた。

「吉野4段。帰る前に何処へ行きたいですか?」

「そうですわね。絶品たこ焼きがあるとお聞きしましたから、是非食べたいですわ」
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