女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
まるで桜花が帰ってくるのを待ち構えてでもいたかと疑う勢いだと、桜花は首を傾げた、

「お嬢さま。お帰りなさいませ」

「只今」

元気がないーーメイドは桜花の声音から桜花が対局に負けたと察した。

玄関から居間へ移動しながら「今日の対局は残念でした」と言いながら、桜花の鞄を手に取った。

「見里清麗、次でタイトル連勝ストップさせますわ」

「お嬢さま。その意気込みです。ところでお嬢さま、翡翠さまはお迎えに見えられましたか」

「いいえ。今日は渋谷のイタリアン店の前でお見かけしましたわ」

「あっ……女性と一緒だったのでは?」

メイドは桜花の顔を見ながら、おずおずと訊ねた。

「ええ、そう。何か知っているのかしら?」

「いえ……その……」

「知っているのね。白状なさい」

明らかに様子が怪しいと感じて、桜花がメイドに詰め寄った。
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