女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
2章 翡翠、参上
将棋研修会、端島喜之介8段邸。

研修会は週に1、2回2時間位のペースで行われる、

8畳の部屋は、畳が少々たわみ正座の跡がくっきりとついている。

書棚には将棋の本、棋譜のファイル、タイトル戦トロフィーなどが整理整頓して並べられている。

弟子は4、5人がいつも参加していて、女性は桜花1人で、桜花は端島門下では最年少だ。

研修会は煙草厳禁だが、何故か書棚に灰皿が置かれている。

端島はこの部屋で、こっそり煙草を吸っているのかもしれないと、桜花は思っている。

端島喜之介は47歳で、銀ぶちで度の入った眼鏡をかけている。

まばら白髪の神経質そうな印象で、実際かなり神経質だ。

雨音が少しでもすると、耳栓で耳を塞いだり、日射しが少しでも眩しいと、カーテンを締めさせたりする。

研修会終了後。

端島は他の弟子が部屋を出ていくのを見届けると、桜花を呼び止めた。
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