女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
萩尾はシティボーイ風の装いをしているが、やぼったい感じの青年で、桜花の好みではない。

桜花が中学2年生で3段リーグを闘っている時、萩尾はまだ初段だった。

桜花が4段昇格を待たずに女流棋士に転向し、一躍名前が知られ始めると、執拗に話しかけてくるようになった。

3段リーグを勝ち上がり、上位2位までが4段になり、初めてプロ棋士と認められる。

だが、3段リーグを勝ち上がり4段昇格しプロ棋士になった女性は1人もいない。

女流棋士はプロとして闘ってはいるが、女流棋士と棋士では、同じプロでも棋士の方が格上で、女流棋士と棋士、区別されている。

「吉野さん。師匠、何の話だった?」

萩尾は桜花が玄関から出てくると、せっついたように話しかけた。

桜花の方が萩尾より早く奨励会に入り、端島の弟子になったのも桜花の方が先で、3段になったのも桜花が早かった。

萩尾は桜花の後輩で、桜花が先輩で、桜花は萩尾には馴れ馴れしく話しかけてほしくないのだが。
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