幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
「ふふっ」

突然修平が笑った。


「今日さ、おもしろいことがあったんだよ」


そう言うと、楽しそうに電車で膝枕で寝た女の子の話をしてきた。

「しかも名前が『姫川さん』っていうんだよ。依子が木崎で、俺は大路だから、姫川さんの姫でファンタジーの世界観だろ?」

本当だ!
あはははは!
すごい偶然!

「すごい偶然だろ?
ゲラな依子が喜びそうな話だなって思ったんだー」

ははっと笑って、飾ってある私の写真に手を伸ばす。


そっと写真の中の私を撫でながら、
「依子、笑ってるか?」
と呟いた。


修平。
床に胡座を組んで座る修平の背後に、私は座った。
彼の背中に、自分の背中をあてるように体育座りで。


触れそうで触れることのない背中。
感じることができない互いの体温。



修平。

愛してるわ、修平。



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