幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
「大路さん」

わたしは肩を叩いた。
大路さんは気付かない。

再び、
「大路さん、大路さん」
と先程より少し力を込めた。

「ん・・・」
大路さんはゆっくり目をあけて、
「あれ?姫川さん?」
と言うと、くしゃりと髪をかきあげた。
いつもセットされた髪型が完全に崩れた。

「あー、俺寝ちゃってたのか」

「駅、次ですよ。大丈夫ですか?立てますか?」
「え?あ、うん、大丈夫、立てるよ」


『次は大浜~大浜駅~』

大路さんはフラッとしながら立ち上がった。
「おっと」
「危なっ」
バランスを崩した大路さんに抱きついた。

「ごめっ」
「このまますがってくだい」

「いや、でも」
「大丈夫ですから」

「ありがとう、助かるよ」

「タクシー使いましょう。送ります」
「乗り場までで大丈夫だよ」

「ダメです。家まで送ります。倒れたらそれこそ大変ですよ」
「ごめんね」


私は大路さんの体の熱を感じて、不謹慎にもドキドキしてしまった。


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