幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
ある日、修平が私の母と電話をしていた。
来月ある私の十三回忌のはなしのようだった。

電話を切った修平は私の写真を手に取った。
久しぶりに触った写真立ては埃っぽかったのか、ティッシュで綺麗に拭いてくれた。


何度も拭きながら、
「なあ、依子。今、笑ってるか?幸せか?」
と呟いた。


突然どうしたの?

「俺・・・・俺・・・」


え?どうしたの?
何か、あったの?


私は心配になった・・・けれど、やはり幽霊の私には何もすることができない。
修平の辺りで右往左往するしかない。



「俺、大切にしたい人ができたんだ」

「一生、依子だけを愛するって誓ったのに・・・ごめんな」


修平は何度も私を、私の写真を撫でた。
その目からは涙が幾筋も流れていた。






いいよ。
仕方ないよ。
私の方こそ先に死んでしまってごめんなさい。

わかってるから。
大丈夫だから。



でも、どうしてだろう。



すごく、悲しくて。
寂しくて。
苦しくて。


 

両手で顔を覆い、私はその場に座り込んだ。
指先が震える。


溢れてくる涙を止めることができない。








私は、修平の幸せを祈りながらこの世を去った。去ったはずなのに・・・。

どうしてこんなに悲しいんだろう?
苦しいんだろう?


修平を置いて死んじゃったのは私なのに。


嫉妬してしまう。
羨ましいと思ってしまう。



ごめんね、修平・・・。




「ごめん、依子・・・う、うう」




顔を上げ、私は修平を見つめた。




修平、愛してる・・・修平・・・。



「依子・・・ごめん。ごめんな」
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