幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
私、大路依子はスマホを耳に当て、楽しそうに話す修平を見つめていた。


 

優しい話し方。
うん、うんと言いながら頷く様子。
楽しそうに笑う声。
愛しそうなその瞳。


「また明日。おやすみ、姫川さん」


私は、修平のこの声を、この顔を知っている。



修平が姫川さんのことを愛しく思っていることが、手に取るように分かる。



ソファから立ち、電気を消してリビングを出た修平が戻ってきた。

「おやすみ、依子」

私の遺影に声をかけて、再びリビングを出て寝室へ向かった。



もう、潮時だ。
修平の傍にいてはいけない。
修平の幸せのために、私はここにいてはいけないんだ。


涙がこぼれる。





ーーー来月。
私の十三回忌がある。




< 37 / 45 >

この作品をシェア

pagetop