幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
それから俺達はいろんな話をした。

日が傾き、夕焼けが水面に煌めく頃、依子の身体も煌めき始めた。


「修平、今までありがとう」

依子が静かに言った。
依子の身体が少しずつ透けていく。


俺は依子の腕を引き寄せ、抱き締めた。
きつく、きつく抱き締めた。

「姫川さんと幸せになってね」

「依子」

依子の身体が消えてしまわないように抱き締め、その額にキスを落とした。

クスクスと依子が笑う。

「私ね、額にキスされるの大好きだったんだよ」

「知ってたよ」

「ねえ、修平」

「ん?」

「愛してたわ」

「愛してるよ」

「ふふ・・・ありがと・・・」


抱き締めた腕の中から依子の気配が消えた。

「依子・・・」

俺は目を開けた。




そこはいつもと同じ寝室のベッドだった。 

俺は仰向けになったまま、両手で目を覆った。
髪が涙でびしゃびしゃに濡れていたが、俺は起き上がることはできなかった。





この日は、依子の十三回忌だった。



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