幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
がたんごとんがたんごとん・・・



「んふうー---」

私、姫野弥生は少し伸びをした。
電車に座っているうちに眠ってしまっていたようだ。

ゆっくりと目を開け、2,3度瞬きをする。

すると、目の前に、誰かいる?
目を擦って、その誰かに目を凝らした。

顎?
目を瞑ってて。
寝てる?

だれ?

見知らぬ男の人。
…の寝顔が目の前に・・・ええええ!?誰!?

寝ぼけていた頭がだんだんクリアになる。


「わあ!!!」
慌てて飛び起きた・・・ら。
ガツッ!
「いたあっ!」
「うっ!」

慌てて飛び起きた私は、頭を両手で抑えた。
見知らぬ男の人は、顎を抑えて俯いている。


私はこの状況が理解できず、頭を押さえたまま周りを見渡した。

ここは電車の中。
私もおじさまも座席に座って痛みに悶えている。
おじさまは顎。
私は頭。
ということは、私はこの人の膝枕で寝ちゃってたってこと?!

とりあえず、目の前で顎を押さえている男の人が痛そう。

「あの・・・大丈夫ですか?」
頭頂部を摩りながら声を掛け、その顔を覗き込んだ。

彼はうんうんと何度も頷きながら、右手を前に出した。
「だ、大丈夫。あなたは大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫、です」

男の人は眉間に皺を寄せ、顎を指で摩って私を見つめた。
私は頭に手を当てたまま、男の人を見つめ返す。


・・・・・・・・。


無言・・・。


「「ふっ」」

「ふふふふ」
「んふっふふふふ」
「んははははは」

二人で顎と頭を摩りながら笑った。
電車の中だから、口を押えて声がでないよう、暫く声を殺して笑い会った。


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