課長のケーキは甘い包囲網
「こいつは以前、部長にお酌してビールをこぼし、次は俺にもビールの泡をあふれさせ、ダメダメだったんだ」
「なるほど。今日は完璧だね」
そう言うと、二人の課長はグラスをぶつけて一気に飲んだ。私は春日課長からおかわりを入れた。また上手にできた。
「田崎さん……嬉しそう。上手に出来たね」
「はい!」
「ほれ、俺にも入れろ」
「わかりましたよ」
「こぼすなよ」
「はい、はい」
「返事は一回でいいぞ」
「……もう」
春日課長がにやにやしながら、私達を見てる。
二人は嬉しそうに食べ出した。私は、コーヒーとケーキの皿を下げた。
ふたりだけにしようと、皿を下げるとそっと部屋へ戻った。二人は私の気持ちをわかったのか、それ以降呼ばれることはなかった。