課長のケーキは甘い包囲網
だが、有紀がわざわざ俺宛にこんなもの渡すくらいだから、何か話したいんだろうとすぐにわかった。
俺は彼女に連絡しようとしたが、とりあえずケーキを食べてからにしようと思った。感想を聞きたいかもしれない。
そういえば、静かだがあいつはどうしたんだろう。俺は春日の食べ残した食器を片して、田崎を探しに行った。
あいつの部屋をノックしたが返事がない。そうっと開けてみると、ベッドにもたれて寝ている。
携帯を見ていたのか、膝の上に乗っている。
俺は彼女に近寄った。
すると、後れ毛が彼女の口にかかっていたので、耳にその髪一房をかけてやった。ふわっと彼女の香りがした。
俺はそのまま吸い寄せられるように彼女のおでこにキスすると、携帯を横に置いて背中を向けて戻った。
田崎を……確かに最近女として意識している。
最初は本当に部下として守ろうと思っていたが、どこか彼女に癒やされていて、相性も悪くないから自分が手元に置きたかったんだということは自覚している。
一緒に暮らし始めて二ヶ月。